2014年08月04日

藁の楯 台湾新幹線

 前から観ようと思っていた映画「藁の楯」
 やっとDVDで観ました。
 おもしろいですね。久々に内容にのめり込んで息つく暇もなく観てしまった邦画アクションものでした。
 大護送集団のパトカーの車列。
 昔の「大都会PARTⅢ」のオープニングを彷彿させました。
 でも、大都会は毎週放送のドラマであれだけ派手に車を壊していたから、なんて景気の良い時代だったんでしょうか。

 内容についてとやかく言うのは野暮だけど、やはり台湾新幹線でのロケ部分については、鉄道マニア的には突っ込みどころ満載でした。

 まず、あの新幹線シーンについて、興味のない人は日本で撮影したと思っていたことにびっくりでした。色が違うじゃんと。
 まあ、こんな基本は脇に置いておいて。

 JR東海は絶対に東海道新幹線での映画ロケとかは認めないというのが、国鉄時代からの伝統です。「新幹線大爆破」、「動脈列島」などなど。
 JR東の方が最近はロケの協力に積極的なようです。
 それで、新幹線のシーンは台湾でのロケとなった次第です。
 台湾新幹線の車両自体は、日本の新幹線700系そのものです。
 
 さて、福岡からの飛行機移送に断念して、極秘にその場の独断で新幹線で東京へ向かう選択をした刑事たち。計画にない行動ならば察知されないということで。
 小倉駅から乗り込むという設定でした。なんで小倉なんだろう。乗り込んだ車両は7号車。ここでいいだろうと、まったくの無計画です。
 16両編成のほぼ中間車両。ホームの階段位置の関係からもっとも乗客が多く、一番まっさきに指定券を売り始める車両です。編成の中間なので車内を行き来する人も多い車両をなぜ選択したのでしょうか。
 車掌に命令して車内の乗客を無理矢理グリーン車へ移動させましたが、私だったら先頭の16号車を選ぶでしょう。16号車なら車内通り抜けで他の車両へ行く人は皆無だし、防衛上も15号車側の通路扉1ヶ所を守れば良いし、上り列車だから運転席も支配できるから。
 クーデターを企み、寝台特急さくら号に乗り込んだ自衛隊員たちが1号車の全席を買い占める設定の「皇帝のいない八月」はその点もしっかり配慮していました。1号車なら他の通り抜け客が来ないという前提で。

 小倉から乗り込んで7号車を占領したあと、新山口や広島停車時に乗り込んで来る乗客にはどう対処したか描かれていませんでした。

 岡山を過ぎてから車内で撃ち合いになりケガ人が出て、相生駅に臨時停車させました。相生駅は対面ホームと真ん中に通過線がある、静岡駅や浜松駅のような典型的な新幹線途中駅です。それなのに映画の相生駅ホームは島式2面4線の名古屋、京都、岡山、広島みたいな全列車停車が基本の構造でした。あれならまだ、広島-岡山間で撃ち合いがあって、岡山駅に停車中にケガ人を降ろしたという設定にした方がよかったのでは。
 台湾のなんて駅を使ったか知りませんが、あの構造で相生駅という設定は無理があるぞと。

 次に、新神戸駅で降ろすという設定でしたが、新神戸はトンネルとトンネルの間の狭い急傾斜の地上部分に建設された対面式2面2線駅で、通過線は構造上作れなかった、熱海駅と同じ構造です。それなのに、またもや島式ホームの2面4線です。
 無理がありすぎるぞと思いました。まだ、姫路駅か西明石駅ということにすればよかったのに。相生と同じ対面式2面4線だけど。

 新神戸で他の乗客を全部降ろしてそのどさくさに紛れて脱出を試みるも下車に失敗し、東京へ向かう決心をしますが、そのまま新大阪や京都、名古屋も停車するなと、刑事たちは車掌に命令しています。そんなこと車掌や運転士の権限でできるわけないことは誰でもわかるでしょう。列車指令とやりとりして、JRと警察が一体となって協力し他の全新幹線を停車、待避させるなどの大々的な措置を行わなければならないのに、そういうシーンは見事に省略されています。そういう意味、造りが雑だなと思いました。「新幹線大爆破」はそういう点、緻密に描いていました。

 そして、前方の線路に障害物を落とされたということで緊急停車、車外に脱出とあいなりました。すさまじい衝撃で急ブレーキがかかったけれど、新幹線の緊急ブレーキは静かなものです。いつもより強いブレーキだなと思うくらいで静かに停車します。直接新幹線が障害物に衝突して脱線でもすれば別だけど。
 停車した本線上は、明らかに車両基地内です。あんな急カーブ、本線上にはあり得ないし。

 司令室の列車進行表示も、なぜか右側通行だったし、こんなことくらいちゃんと出来るはずなのにと、がっかりでした。
 あと細かい点では、車内窓際に窓を割るための非常脱出用のハンマーがあるのが見えました。日本でも寝台車なんかには装備されていたけれど、新幹線にはありません。台湾新幹線には非常脱出用ハンマーが装備されていると知りました。

 と、まあ、鉄道の視点では、ちょっと雑だったのではないかと思った映画でした。台湾新幹線でのロケは大々的に宣伝していたのにね。

 あれだけ大変な前代未聞の事態の中での福岡から東京までの移送なら、福岡県警から警視庁の屋上まで警察ヘリで運べばいいじゃんと思ってしまいました。旅客機よりは関わる人間を信頼できるし、まさか素人が地対空ミサイルで撃ち落とすなんてあり得ないし。

 まあ、それを言ちゃあおしめえよということですね。  

Posted by よっぱらいくま at 11:30Comments(2)TrackBack(0)音楽・映画・テレビ